親は子供のためにも子育てを通して幸せになることが必要です。
そのために必要な4つのポイントをご紹介します。
(1)幸せを感じる条件を理解する。
(2)子供の長所を見つける努力をする。
(3)子供との一体感を強める努力をする(子供の愛情を感じやすくする)。
(4)子育てのイライラと不安を解消する術を身につける。
子供の優れた能力の一つに「まねる」力があります。この力を脳科学ではミラーニューロンと呼んでいます。人が学習していく上では欠かせない大切な力です。
ミラーニューロンは無意識で働くため、目の前の行動を良いことも悪いことも関係なくまねてしまいます。そのため、まねるものによっては、子供は幸せにも不幸にもなってしまいます。
「子供は親の背を見て育つ」という言葉が示しているように、子供は親が教えたことだけでなく、親の行動も自然とまねていきます。もし、親の言動が一致していない場合は、子供は困惑することがあります。
例えば、電車の中で、「お年寄りの人が立っていたら席を譲りなさい」というしつけをご家庭で実践していたとしましょう。しかし、もしお父さん、お母さんが実際に目の前にお年寄りがいるにも関わらず席を譲らず、その姿を子供が見ていた場合を考えてみてください。
子供は1人の時に席を譲るでしょうか?
結果は子供によって異なるかもしれませんが、親が席を譲らない姿を見て子供が困惑する可能性は高いです。
心理学の分野では、親の言動が一致しないとき、どちらが正しいのかわからなくなり、子供に不安を与えることがわかっています(Double bind theoryを参照)。
親が日々笑顔で幸せそうに生活を送っていれば、子供も親の姿をまねて笑顔で楽しそうに生活をしていく可能性が高まるでしょう。一方、親がほとんど笑わず、子育てや仕事のことで、常にイライラしていると、子供も笑顔で楽しく過ごすことが難しくなると思います。
このような場合では、親がどんなに子供の幸せを願っていても、子供が幸せを感じにくくなってしまうことがあるのです。
ですから、子供のためにも親は自分が幸せを感じられる環境を整えていくことが大切です。
実際に私が現場で指導をしていくなかで、お母さん、お父さんが子育てを楽しめるようになってきたと感じると、子供が明るくなっていく姿を何度も目にしてきました。
その一方、とても熱心すぎて、日々の子育てがつらいと話されている方のお子さんは、強い不安感を抱えているケースがあります。もしかしたら、子供は親のストレスの原因を自分のせいかもしれない、でもその理由がわからない、どのようにして親に接していいかわからないというように、不安を感じているのかもしれません。
私の経験談で恐縮ですが、保護者が子育てを楽しめるよう、行動を意識的に変えたこと(努力したこと)で、子供によい変化があった具体的なケースを下記にあげます、ご参考にしていただければ幸いです。
【親の態度を変えて、子供の明るさ(幸福度)が上がったケース】
・毎日子供を叱っている。
⇒叱るよりも褒めることを増やした。
・子育てに関して常に不安感を抱えている。
・いつもイライラした感情を持っている。
⇒不安やイライラを解消する術を身につけた。(詳細は後述)。
・毎日子供の前でため息をついている。
⇒ため息が少なくして、子供に笑顔を向けることを増やした。
・しつけに関して言動が一致していない。
・しつけの基準が統一されていない。
⇒一貫性を持ったしつけをするようにした。
・下記のような言葉を日頃子供に投げかけていた。
・あなたなんて生まなきゃ良かった(存在を否定する言葉)
・何て嫌な子なの(人格を否定する言葉)
・言うことを聞きなさい(行動を抑制する言葉)
⇒子供の心を育てる言葉を日々使うようにした。
最後にお伝えしたいことは、子供を愛しているから子育ては全然苦にならないという方は、ほとんどいないということです。今まで接してきた保護者の中では、子供に愛情があればあるほど、たくさんの悩みと不安を感じられている方が多くいらっしゃいました。
また、子供を愛しているにも関わらず、常にイライラ感を感じ、時には憎しみさえ感じてしまう人もいます。
だからこそ、子育てを楽しむことが必要になるのだと私は考えています。
もし、楽しさよりも辛さの方が上回ってしまい、充実した子育てライフを送ることができていないと感じられている方は、ぜひ子供の幸せのためにも、お父さんお母さん自身がまず自分の幸福度を上げること、また子育てを楽しむことをしていただけるとよいと思います。
では、子育てを楽しむための方法とは具体的にどのようなことをすれば良いのでしょうか?
下記にポイントを書きます。それぞれの項目は本ホームページで取り上げていくつもりなので、ぜひご参考にしていただければ幸いです。
(1)幸せを感じる条件を理解する。
子育てにおいて、どのような時に幸せを感じられるか、把握することが大切です。
幸せは「なる」ものではなく、「気づく」ものだといわれることがあります。自分がどのような時に、幸せを感じるのかが理解できれば、あえてそれらを意識して子育てをするのも、幸福感を増やすという観点では、一つ有効な手段だと思われます。
(2)子供の長所を見つける習慣を身につける。
基本親は子供の長所よりも欠点の方に目がいってしまいがちです。そのため、意識的に子供の長所を探す必要があります。
※具体的な長所の見つけ方は、「ペアレント マインド2017年10月号」を参考にしてください。
(3)子供との一体感を強める子育て方法を行う。
子供を深く愛せないという方が時々いらっしゃいます。
その原因として私が経験してきた中では、下記の2種類のケースが多かったです。
①子供の愛し方がよくわからない。
②子供から愛情が返ってこない。
①のケースでは、親自身が自分の親から受けた教育が影響している場合もあります。親としてどのように子供を可愛がって育てればわからない、どのようにして、愛情を伝えるのが子供のためになるのかがよくわからないと話される方が多いです。
②のケースでは、愛情を注いでいるにも関わらず、子供からの反応が乏しい。自分に子供が懐いている感じがしない、自分が求められている感じがあまりしない、という時が当てはまります。愛情とは相互にやりとりがあるからこそ、育まれていくものです。
「心の教育プログラム」で上記の問題に関しては、科学的な根拠に基づき解決できるように、指導方法は網羅されていますが、今後ホームページ上でも上記に対する悩みを解決していく方法を、少しずつご紹介していきます。
(4)子育てのイライラと不安を解消する術を身につける。
子育てにおけるイライラや不安を完全に消すことは難しいでしょう。では、どのようにすればよいのでしょうか?
それは、不安の解消方法とイライラ感をコントロールする術を身につけることです。
詳細は下記を参照してください。
Qどうやったら子育てから来る不安感を減らせるの?
Qどうやったら子育てからくる疲労感を減らせるの?(近日公開)
Qどうやったら子育てのイライラ感を減らせるの?(近日公開)
【引用・参考文献】
Bateson, G., Jackson, D. D., Haley, J., & Weakland, J. H.(1962) A note on the double bind. Family Process 2: 154-161.