子供が自由な意思決定をできる環境を整えることが大切です。
最近教育者の中で「自己管理能力(自制力)」が注目を浴びています。自己抑制能力が高い子供は将来学力や裕福度が高くなる傾向があることが報告されているからです。今回はそのような自己コントロール力の性質をさぐるために、フロリダ州立大学の心理学者ロイ・バウマイスターが行った研究を紹介いたします。
ある部屋の中で、焼きたての良い匂いがするクッキーと生のラディッシュ(二十日大根)をテーブルの上に用意し、下記のように空腹の大学生をAとBの2つのグループに分けて、そのテーブルの前に座らせた。
A テーブルにある焼きたてのクッキーを食べて良いグループ
B テーブルにある焼きたてのクッキーは食べてはならないが、生のラディッシュ(二十日大根)は食べて良いグループ
それぞれのグループを観察すると、グループBは明らかに誘惑と戦っていた。仕方なくラディッシュをかじる者やクッキーを手に取り匂いをかぐ者、誘惑に負けそうな場面は何度かあったが、最終的には誰も誘惑に負けることはなかった。
その後、学生たちにパズルを解いてもらった。このパズルは解けないようになっており、あきらめるまでの時間を測定した。
その結果、グループAの学生たちは20分間パズルに取り組めたが、グループBの学生たちはたった8分程で諦めてしまった。
このことは、グループBの学生たちはクッキーの誘惑に逆らうために忍耐力を使ってしまったため、パズルに対して根気よく取り組む力が減ってしまった可能性を示している。
上記の結果は、人間の忍耐力には限りがあり、筋肉のように使い続けると疲労してしまう可能性を示唆しています。
よく過干渉の親の元に育った子供は主体性や忍耐力(自制心)が低い子が見られますが、もしかしたらこのようなことも関係しているのかもしれません。
常日頃、いろいろと我慢をさせて育てていると、大事なところで、自己をコントロールする力が発揮されないことがあります。子供はもともと好奇心が高く主体性に溢れています。それらの力を最大限に引き延ばすには、子供がある程度自由に意思決定ができる環境を作ってあげることが大切だと思います。
【引用・参考文献】
ロイ・バウマイスター,ジョン・ティアニー 渡会圭子 訳 (2013). 『意志 力の科学』東京:インターシフト